士業の事務所要件について

開業するにあたり、事務所をどこにするかは頭を悩ますところだと思います。固定費を減らすという観点では自宅開業が理想的ですが、マンションやアパートなどの借家住まいの方は自宅での開業は難しいことが多いと思います。かく言う管理者も自宅開業は難しい状況で、レンタルオフィスやバーチャルオフィスなどの物件情報をリサーチしています。

リサーチしていてよく目にするのは「行政書士はレンタルオフィスでは開業できるが、コワーキングスペースやバーチャルオフィスでは開業できない」、「社会保険労務士はコワーキングスペースやバーチャルオフィスでも開業できる」などの情報です。実際どうなのでしょうか。

今回は改めて、行政書士と社会保険労務士の事務所要件を確認してみたいと思います。

行政書士の事務所要件

神奈川県行政書士会のホームページに「行政書士事務所設置指導基準」が掲載されています。この指導基準の第2条に以下の記載があります(※確認日は2021年2月26日です)。

第2条 事務所の設置にあたっては、業務取扱上の秘密を保持しうるよう、明確な区分を設けなければならない。

2 事務所の管理に責任を持ち、正常な利用、運営を図らなければならない。

3 事務所は、不特定多数人に認識され、その依頼に応じられるよう適当な場所に設置しなければならない。

4 事務所の防火及び消化の設備を確保するように努めなければならない。

5 事務所の内外装は、品位を保持しうるよう配慮しなければならない。

神奈川県行政書士会 行政書士事務所設置指導基準

「業務取扱上の秘密を保持しうるよう、明確な区分を設けなければならない」、「不特定多数人に認識され、その依頼に応じられるよう適当な場所に設置しなければならない。」とあり、登録時に事務所の現地調査もあるので、行政書士はコワーキングスペースやバーチャルオフィスでは開業できないと言われています。

社会保険労務士の事務所要件

神奈川県社会保険労務士会のページには事務所の要件は記載されていません。

全国社会保険労務士連合会のホームページにも記載はなさそうです。

社会保険労務士法には以下の記載があります(※確認日は2021年2月26日で、e-Govで確認)。

第十四条の二 社会保険労務士となる資格を有する者が社会保険労務士となるには、社会保険労務士名簿に、氏名、生年月日、住所その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

2 他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行おうとする社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員となろうとする者を含む。)は、事務所(社会保険労務士法人の社員となろうとする者にあつては、当該社会保険労務士法人の事務所)を定めて、あらかじめ、社会保険労務士名簿に、前項に規定する事項のほか、事務所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

3 事業所(社会保険労務士又は社会保険労務士法人の事務所を含む。以下同じ。)に勤務し、第二条に規定する事務に従事する社会保険労務士(以下「勤務社会保険労務士」という。)は、社会保険労務士名簿に、第一項に規定する事項のほか、当該事業所の名称、所在地その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

社会保険労務士法

第十八条 他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行う社会保険労務士(社会保険労務士法人の社員を除く。以下「開業社会保険労務士」という。)は、その業務を行うための事務所を二以上設けてはならない。ただし、特に必要がある場合において厚生労働大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

2 社会保険労務士法人の社員は、第二条に規定する事務を業として行うための事務所を設けてはならない。

社会保険労務士法

行政書士のような事務所設置基準は見つからなかったです。

で、神奈川県社会保険労務士会にも事務所要件について問い合わせしてみました。レンタルオフィス、コワーキングスペース、バーチャルオフィスで開業は可能なのかと。回答をざっくりまとめると「社労士法第21条(秘密を守る義務)及び第27条の2(開業社労士の使用人等の秘密を守る義務)で課されている個人情報などに対する守秘義務が守れる事務所にしてください」という内容でした。

行政書士のように基準を明確に示しているわけではないので、上記のように回答するしかないですよね。

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